少子・高齢化社会の処方箋としての大胆提案
本書においては、岡山県真庭市の取組の他に、広島県庄原市や山口県の周防大島など、それぞれの里山での営みが紹介されている。ご関心のある方はぜひ本書を一読いただければと思うが、耕作放棄地を活用して淡水魚を養殖したり、耕作放棄地に乳牛を放牧するなど、どれも大量生産・大量消費に慣れた都会の感覚からは想像もつかない形で地産地消をベースとした豊かな生活が営まれている。そこでまず都会育ちで東京勤務の筆者が思うのは、東京をはじめとする大都市部で同じことをしようとしても無理だということである。バイオマスをどんなに活用しても今の東京が必要とする電力をまかなえるはずがない。本書にもこの点は明記されているが、本書は単に田舎暮らしを勧めるものではない。「里山資本主義」はあくまでもサブシステムとして位置づけられていて、マネー経済をはじめとする現在の体制と共存しつつ、今後の少子・高齢化社会に対する処方箋にもなり得るものとして大胆に提案されているのである。