出だしの「調」が曲全体を決定づける
話は変わりますが、作曲家が自作の「調」を選択するのは、いろいろな諸条件を勘案したうえでのことです。クラシック曲は長いので、もちろん曲中で転調していろいろな調を使うのは当然なのですが、例えば、「交響曲 ハ短調」と言った場合は、最初の楽章の出だしの調のことを指していて、この調が、その曲全体を決定づける重要なものとなるのです。
ハ長調、ト長調、イ短調、ニ長調、ホ短調...作曲家の選択肢は、たくさんありますが、たとえば、ショパンなどは自らがピアニストで、ピアノ曲を多く残したので、ピアノが弾きやすい、フラットやシャープがある程度数が付いている調を選びがちです。彼にとって、調号が全くついていない、つまり白鍵だけで弾くことになる「ハ長調」は決してピアノ向きの調ではなく、なるべく避けていたのです。
オーケストラの場合は、クラリネットやホルン、トランペットなどの、「オリジナルの調がハ長調ではない」楽器が存在し、さらに、それらの楽器が得意な調と苦手な調があるため、その楽器の「鳴り具合」を考えて調性を選択する場合もあります。
もちろん、多くは、それぞれの調が持つキャラクターを作曲家は考えるわけですが、一筋縄ではいかないことがご理解いただけたでしょうか。