■「フランスの子どもは夜泣きをしない」(パメラ・ドラッカーマン著/鹿田昌美訳)
パリ子育て奮闘記、とでも言おうか。著者は米国人ジャーナリストであり、国際結婚を経てパリで出産・育児を経験したという。子育てにおける異文化発見を平易な文章でつづっており、あっという間に読み通せる。
共同体としての知恵
著者は妊娠が判明して以降、多くの情報を集めるが、何が「正しいこと」か判らなくなり疲労困憊する。だがパリの母親たちは美しくしなやかで、こうした悩みとは無縁にみえる。そこで著者はフランス人への聞き取りを始める。
米国流では夜泣きの都度、母親は起きて面倒を見る。フランス流は「赤ちゃんは眠り方を知らない、うまく眠れるよう導く」と考え、ちょっとぐずったくらいでは対応しない。詳しくは本書に譲るが、これがハウツー本で広まったのではなく当然のように行われている点、共同体としての知恵とも言うべき文化的な厚みを感じさせる。
夜泣きへの対応は日本も米国型だが、乳児の食事や躾の仕方などを見ると、日本の子育てもフランス型に近い部分を多く感じる。「おばあちゃんの知恵」のような伝承の良い部分は活かしていきたいものだ。