シリコンなど高価な素材で作られたダッチワイフ(等身大の女性の人形)、いわゆる「ラブドール」。性処理のために使われるイメージが強いが、最近それが変化しつつあるらしい。
ドキュメンタリー番組で「ラブドール」と共に暮らす人々が紹介され、その独特な生活ぶりが視聴者に衝撃を与えた。
「親密度を上げたい、一緒にいたい感覚が強い」
ドキュメンタリー番組「NONFIX」(フジテレビ系)2015年9月24日放送回のテーマは「ボクが恋したラブドール」だった。
番組では、初恋の女性と同じ「イクエ」という名前をラブドールに付け、車いすに乗せて一緒に買い物したり旅行したりする60歳の男性に密着。26歳で結婚し、妻も子供もいるが、この5年は「イクエ」と二人で生活している。15年前に地元の茨城県を離れて転職を繰り返す生活で、家族は付いてきてくれなかったという。
男性は家賃5万5000円のアパートに住み、自分の服は5、6着のみ。一方で「イクエ」には一着5万円ほどの服も買い与え、これまでに100万円以上費やしているそう。「彼女の笑顔を考えれば安い投資だと思います」「結構幸せですよ。彼女が来たことによって楽しい思い出を共有できた」と笑う。
家族に関しては「あんまり愛してないと思うんですよ彼女(妻)は。僕もあんまり(愛情を)持ってなかったですね」と言うが、実は「イクエ」との生活は妻公認。冷めた関係の時期もあったようだが、最近は「イクエ」についてよく会話するようになり、「イクエ」が二人の仲を取り持っているようだった。
最後は男性の部屋で、男性と妻、そして「イクエ」と3人で記念写真を撮影。妻は「たまにはこういうのもあってもいいよね」と笑っていた。
番組では他にも、08年にラブドールとの結婚式を挙げた男性を紹介。自宅には「妻」以外にも何体ものラブドールがいる。
「性欲とは違う次元で生きてます」という男性は、「僕はね、人形に囲まれてる感じが好きなんです。支配欲なんじゃないですか。自分が世界を支配したい」と、ラブドールと生活する理由を語っていた。
ラブドールを愛好する「日本ドール公団」のぴすけすさんも、「エッチ目的よりも親密度を上げたい。一緒にいたい、そういう感覚の方が強い」と語っていて、皆「ラブドール」を単なる性処理の道具として扱っている様子は全くなかった。
「犬や子どもに愛情注ぐのと大差ないでしょ」
この内容が視聴者に大きな衝撃を与えたようだ。ツイッターには、
「僕の愛したラブドールとかいうフジの狂気に満ちた番組を目撃して、変な汗が止まらない」
「濃すぎてついていけない」
「ダッチワイフとしてあつかってる方が健康的なんじゃ...現代社会の闇ですか...??」
など、驚きの声があふれた。
一方、番組で紹介された「ラブドール」との暮らしぶりに理解を示す向きも。
「人間が無機物に対してとるコミュニケーションの仕方とかは非常に興味深かった。これから人工知能も進めばああいうコミュニケーションの形は増えていくんではなかろうか」
「見始めは完全にひいてしまったが、若さと美しさ、精巧に作られたヒトガタに魅せられるのは男女問わず共通なようで。人は所詮、錯覚で生きてるのだとしたら、人形との関係性だけで自己完結してる方が純粋なのかも知れない」
「犬等に置き換えても問題ない気がする。ラブドールという無機物無反応な物に対してだから違和感あるだけで、犬や子どもに自分の好みの服着せて一方通行の愛情注ぐのと大差ないでしょ」
「週刊東洋経済」14年3月1日号には、今後中高年男性の一人暮らしが増加し続け、2030年には50~60歳代男性の4人に1人が単身世帯になるとの予測が紹介されている。
孤独感が広がる一方の現代社会で、「ラブドール」との愛あふれる生活は、新たな生き方として認知されていくかもしれない。