著者の思い
本書は「あとがき」も大切だ。著者は、藤原氏に解説で「すれた所のみじんもない真っすぐの人」と評されたとおりの直球を放っているからだ。
著者は自身の子を思い、こう綴る。
「この子が大きくなるころには、この国は余程大変なことになっているだろう...これからの日本は物の豊かさにおいて、まわりの国々に追い越されていくかもしれない...太平洋ベルトに大きな津波被害をうければ、国の借金は国内で消化しきれなくなって...大陸よりも貧しい日本が、室町時代以来、五百年ぶりにふたたび現れる」。こう記した上で、日本人の持つ哲学の再発見を求める著者の問題意識は、広く、かつ深い。
「武士の家計簿」は著者の原作、映画とも拝見したが、原作の迫力は段違いであった。「穀田屋十三郎」も映画化されると聞く。著者の思いを酌めば、映画やその論評は、地方創生と単純な役人批判を絡めた陳腐なものとなってほしくない。が、おそらくはそうなるであろう。
酔漢(経済官庁・Ⅰ種)