田舎で「おいしい資本主義」 「アロハで田植え」が単行本に

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活字世界のラッパー

   著者は東京・渋谷生まれ。とはいえ、家には風呂もエアコンもない下流育ち。中学・高校は不良の周辺にいて、売られた喧嘩から逃げたことはない。協調性は常にC評価。新聞社に入ってからもチーム取材は大嫌い。サーフィン、自転車、格闘技と、40歳すぎても孤高のトレーニングに励み、体力には自信があった。ところが、高校時代の土方バイト以来、ひさしぶりにツルハシを振り下ろしてみると――。初めての農作業は甘くはなかった。著者の鍛え上げられた筋肉でさえ悲鳴を上げる。そんな様子を、ロック世代ならではの、テンポの良い文体でつづる。

   句読点の打ち方や、巧みな行替え、などが独特のリズムとなり、活字を読んでいるのに音楽を聞いているような気分になる。意表を突くボキャブラリー。あちこちに毒づき、とうぜん自分自身も俎板に載せて、哄笑を取る作法も心得ている。時には変拍子も交えながら読者を自分の文章にぐいぐい引っ込んでいく。その奔放なトーク・テクニックは、まるで活字世界のラッパーだ。

   新聞業界には、かつては破天荒、型破りな名物記者、名文記者が、どの社にもいた。最近は、記事に署名が増えたものの、ユニークな記者は逆に少なくなっている。

   著者は間違いなく、今や「絶滅貴種」となりつつある、最後の「型破り記者」の一人だ。しかも、その感性と文体は、過去のどのような名文記者とも異なる独創性を持つことを、本書で改めて見せつけた。

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