田舎で「おいしい資本主義」 「アロハで田植え」が単行本に

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「オールタナティブ農夫」として

   朝日新聞文化部の記者だった著者が、初体験の米作りをすることになった理由は大別して二つある。ひとつは東京という資本主義の真っただ中から「ばっくれる」。

   人生の大半を、東京やニューヨークという、あわただしい「資本主義社会」に生きてきた著者は、そこから「ちょっとだけ、降りてみる」ことにする。「あらぬ方へ、鼻歌でも歌いながら...消えちまう」ことで少し頭を冷やしてみようと考えた。

   もうひとつは、将来どんなことがあっても生きていけるように、自分で食うだけのコメを自分で作れるようにする。それは、自分の糧食さえ確保できれば、あとは好きなことをして生きる「おいしい資本主義」があることを示し、それを実践するためでもあった。

   では、真剣にスローライフ、ロハス生活に移行するのか、というと、そうではない。あくまで早朝1時間だけの農作業。著者によれば「オールタナティブ(本流ではない)農夫」。プロでも兼業でもないが、最低限の生活の糧を自分でつくる「オルタナ農夫」を目指した。

   アロハシャツにカウボーイハット。中古のポルシェ・オープンカーで2014年4月、知り合いが一人もいない九州の諫早に赴任。まずは耕作放棄された田んぼを借りることから始める。草刈り、田起し、水路づくり。そして泥田のぬかるみで足を取られ、「地獄の黙示録」さながらの田植え。

   「おめーだれだよ」――自分の田んぼで見知らぬ野郎にでくわす。シャベルで脅して、どかそうとしても、動かない。「お前こそだれだよ」。そんな目をして、大きなイモリがこっちを見つめている...。

   自分こそ、よそ者、新参者。田んぼは、著者が大嫌いな気持ち悪い虫や両生類、爬虫類など「変態野郎」どもの宝庫だった。石垣の雑草刈りをしていると、太くて黒いヘビがとつぜん現れ、腰を抜かしそうになる。

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