自国フランスで評価されなかったサン=サーンスの代表的オペラ

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北アフリカへの転地療養から「さすらいの作曲家」

   もともと健康面に不安を抱えていたサン=サーンスは、寒い北の都市であるパリにいたたまれなくなり、北アフリカのアルジェリアに旅行をします。この「転地療養」は大成功で、彼は以後たびたびこの地を訪れることになります。

   最初のアルジェリア滞在で生み出されたのが、彼のもっとも有名なオペラ「サムソンとデリラ」です。旧約聖書の物語をもとにしたこのオペラは、舞台がパレスチナです。異国の地の滞在でより筆が進んだのかもしれません。程よくエキゾチックな旋律が流れるこのオペラは、今ではサン=サーンスの代表作品ですが、このオペラも、全幕のパリでの上演が、劇場の支配人によって拒否されてしまいます。それほど、首都での彼の評判は悪かったのです。

   結局、そのころはドイツにいたフランツ・リストが尽力をして、ワイマールで、ドイツ語に台本が翻訳された形で初演されました。オペラの上演は大成功で、フランス人たちは、ドイツで大当たりをとったこのオペラの作曲者が自国のサン=サーンスであることをやっと自覚することになり、15年ののち、パリでも上演されることになります。

    しかし、自国フランスでの容赦ない批判にさらされ続けたサン=サーンスは、その後しばらくしてから、旅また旅の「さすらいの作曲家」になってゆくのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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