◆『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』
■はじめに
今回紹介させて頂く『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』は、組織論の名著と言われる『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』について、現代日本の問題と重ね合わせて23のポイント、7つの視点から解説している本です。
『失敗の本質』自体は、大東亜戦争の日本軍の6つの作戦を分析し、それぞれの作戦を通じた敗因につながった要因について、作戦や組織による戦い方の視点から解説している本です。
著者の鈴木博毅氏は、ガンダムの世界をビジネスに置き換えて解説する著書を出すなど、専門的な話を分かりやすく解説することを生業にしている方ですので、本書も気軽に読み切ることができる内容となっています。
帯には『失敗の本質』の著者の1人である野中郁次郎氏による「本書は日本の組織的問題を読み解く最適な入門書である」との推薦コメントが添えられていますが、ビジネスへのヒントを重視した解釈書の側面も有しており、引用等は少なく著者の理解による解釈が含まれていますので、『失敗の本質』を基にして書かれたビジネス書という位置付けの方が正しいかもしれません。関心が高まりましたら原著も併せて読んで頂くのがよいかもしれません。
旧態依然、突然の変化に弱い日本の組織
■書評
結論から申し上げれば、本書を読むことにより、現代の日本の組織は旧態依然として突然の変化に弱い組織になっている、ということを認識できると思います。また、そのような中、どうやって変化に対応し、イノベーションを起こしていくか、ということについてのヒントを得ることができると思います。
本書では、『失敗の本質』について、「なぜ負けたのかを、物量の差や一部のリーダーによる誤判断のせいにして片づけることなく、そうした誤判断を許容した日本軍という組織の特性を明らかにすることで、戦後の日本の組織一般にも無批判に継承された、この国特有の組織のあり方を分析しています」
具体的には、過去の失敗例である日本軍の6つの作戦(ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)を交えつつ、日本組織が陥りやすい失敗の典型を学ぶことができ、それに対処するすべも知ることができます。日本組織が有する傾向と対策、この点を意識した上で仕事をしていくのと、意識せずに仕事をしていくのとでは大きな差が生まれると思います。