オペラ「イーゴリ公」は仲間の補筆で完成
あまりにも、頭が忙しかったため、時々ボケをかましてしまう...といったお茶目なボロディンでしたが、ロシアの歴史上の英雄伝説をもとにした彼の代表的オペラ「イーゴリ公」は、その中の挿入曲「ポロヴェツ人(韃靼人)の踊りと合唱」で、広く親しまれています。ロシアのアジア的エキゾチックさを曲に取り込むのは、バラキレフなどの影響かもしれません。
「ポロヴェツ人の踊り」はその甘い旋律が特徴で、クラシック音楽の範囲を超えてポピュラーなどにも編曲されていますし、日本のテレビでも奈良観光の鉄道会社のCMなどに使われて広く聴かれています。
ただ、残念なことに、この曲を含むオペラ「イーゴリ公」は全体として完成しませんでした。もともと多忙のためものすごい遅筆だったうえ、ボロディンは若干53歳で亡くなってしまったからです。
しかし、ここでも「5人組」の仲間が助けに入りました。5人組の世話係ともいうべきリムスキー=コルサコフが弟子のグラズノフとともに、残った部分を補筆して完成させたのです。ボロディンは、5人組の中で、最も本業が多忙で、その代りもっとも仲間に助けてもらった人といえるかもしれません。
本田聖嗣