「復刻アサヒグラフ昭和二十年」 「永久保存版」を出版――あの時代を忘れないために

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矛盾に満ちた一年を苦い教訓と共に伝える

   アサヒグラフは1923年の創刊。戦中から戦後まで休刊なく続いた唯一のグラフ誌だという。写真と本文を見ながら通史的に20世紀の日本を振り返ることができる唯一のメディアというわけだ。

   今回の復刻版では、戦前・戦中のグラフ雑誌に詳しい編集者の桑原涼さんが節目ごとの解説を書いている。「終戦の年の『アサヒグラフ』をめくると、戦争に呑みこまれながら『報道』しようと苦悩していた編集者たちのヒリヒリ感、終戦の安堵、敗北に終わったことへの落胆の気持ちが伝わってくる」と振り返っている。

   ノンフィクション作家の保阪正康さんも特別寄稿している。当時の朝日新聞本体とアサヒグラフとの微妙な立ち位置の違い、アサヒグラフの特攻隊特集の写真に込められた編集者の思いなどに触れながら、「このアサヒグラフは貴重な歴史的資料としての重みをもつはず」と、今回の復刻版を評価している。

   戦前の日本では、出版法や新聞紙法、治安維持法、国家総動員法などによって多方面にわたる言論統制が行われていた。検閲は常態化し、発禁処分もあった。異論を許さぬ戦時体制がじわじわと強化され、「御用メディア」のみが生き残れるという状況だった。黒塗りのページが目につくとはいえ、アサヒグラフもそうした「国策協力媒体」だった。そして昭和20年を迎えた。

   今から振り返ると、同じ1年の中で「戦前」と「戦後」が同居することになった昭和20年――「前」と「後」の間には深い亀裂が走り、大きな断絶があるが、なお連続しているものもある。そんな矛盾に満ちた「昭和20年」を一冊にまとめた「永久保存版」は、苦い教訓と共に、私たちにいろいろ考える材料を伝えてくれる。少なくともマスコミ関係者は、手に取ってみた方がよさそうだ。

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