「復刻アサヒグラフ昭和二十年」 「永久保存版」を出版――あの時代を忘れないために

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   戦後70年ということで、今年の夏は「戦争」にちなんだ出版物が目につく。そんな中でも編集アイデア賞というか、秀逸の一冊と言えそうなのが、「復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年」だ。「永久保存版」と銘打っている。

   東京大空襲、沖縄戦、原爆投下、玉音放送、マッカーサー進駐、復興に向けての生活再建...。この年に発行されたアサヒグラフの中から、とくに重要と思われる10冊を選んで復刻し、一冊の合本に仕立てたものだ。あの一年に何があり、どう報じられたか。日本はどうなっていたのか。人々はどんな表情で何をしていたのか。グラフ誌なので、ページをめくりながら視覚的に追体験することができる。

  • 復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年
    復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年
  • 復刻アサヒグラフ昭和二十年 日本の一番長い年

「皇国興亡を賭する重大戦局の中に新しき年」

   復刻版だから、当然ながらすべてが発行当時のままだ。横組みの見出しは右から左に流れ、文章は旧仮名遣い。「黒塗り」ページもそのままだ。

   年頭の1月3日号は、「皇国興亡を賭する重大戦局の中に新しき年を迎ふ」との書き出しで総力戦に向けての決意を込める。トップ記事は「聖王陛下 畏れ多き御精勤」。天皇の「精勤ぶり」を伝え、見開きで近影写真などを大きく扱っている。仏印、南太平洋など「大東亜」各地からの現地報告も。ほぼ全ページが戦争関連記事だ。3月7日号の特集は「皇軍・硫黄島に激闘」。米軍との激しい攻防戦が続く現地から報道班員が送ってきた写真8点を掲載。「我らもまた硫黄島の勇士達に続かん」と、まだまだ意気盛んだ。

   しかし、戦局は好転しない。3月21日号は「東京大空襲」の衝撃を伝える。「敵の無差別攻撃」への怒りをあらわにするものの、「損害が大きかった」とも記している。

   4月25日号は「沖縄戦」、6月25日号は「特攻隊」を特集。7月15日号では「本土決戦」に備える人々の様子を幅広く紹介している。

   しかし、一連の戦意高揚記事もむなしく、敗戦。その10日後の8月25日号は「戦争終結の大詔」と「原子爆弾」の特集だ。「一物もなく焼き払われた広島市の惨状」「凄惨たる長崎市」などの現地被災写真を掲載している。かなり早い段階の原爆写真だ。

   9月5日号は「連合軍内地へ進駐」を特集。6ページにわたって延々と進駐軍の外国人たちの写真が続く。トップにひときわ大きく掲載されているのはマッカーサーだ。特集の主役交代が、最高権力者の交代でもあることを見せつけている。

   興味深いのは雑誌に付きものの広告だ。たとえば三和銀行の広告。本土決戦の気配が強まる7月15日号では、「みたみわれ 大君に すべてを捧げまつらん」と悲壮な決意を伝える。戦争終結直後8月25日号や9月5日号でも「皇国再起 一切の無駄を廃し 一路貯蓄へ」と、なお「皇国再起」に力を込める。10月15日号になってようやく、「戦う広告」の臭いが消え、「元気を出そう 働こう」になる。一連の広告文からは、当時の民間企業や国民の心理を推しはかることもできそうだ。

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