戦後70年目にBC級裁判、戦場体験者の記録を読んで分かること

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記憶を父に記録を母に教訓という子を生み、育てて次代に...

   なお、BC級裁判でよく出てくる言葉に、「適当に処置せよ」という口頭での命令がある。これで、捕虜や住民を殺害した場合、そのあいまいさが、後になって上司の言い逃れとなり、命令を実行した下士官クラスが戦犯として罪に問われる結果となった。上司に文書を要求するとさすがにまずいということで沙汰やみになることが多かったというが、いまに通じる教訓ではないだろうか。2005年6月に出た「BC級戦犯裁判」(林博史著 岩波新書)も、8カ国で行なわれたこの裁判の全体像を俯瞰するのに手頃な1冊だ。

   また、保阪正康氏の新著「戦場体験者 沈黙の記録」(筑摩書房 2015年7月)は、戦争体験のうち、もっとも重要な位置をしめるべき非日常的な戦場体験が、そのようなことは平時の日常感覚の中ではあまりにもかけはなれており、いうべきではないという「暗黙の掟」・感情の中で、語られてこなかったことが、日本国の戦争観に奇妙な歪みを与えたという。それでは「戦争の本質」を見誤ることになると指摘する。保阪氏は、本書で、これまでの元兵士からの聞き取りで、語り継がなくてはいけないとの想いでまとめた、一般兵士の住民虐殺の史実などを紹介している。戦争を知らない我々は、果して、自らの国の不都合な歴史的事実を直視し、保阪氏とともに「記憶を父とし、記録を母として、教訓(あるいは知恵)という子を生み、そして育てて次代に託していく」ことができるのだろうか。

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【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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