日本でも女性労働力参加率と出生率の同時上昇の機運――「日本的働き方」の抜本見直しが不可欠――
2006年以降、日本でも、ようやく出生率は反転し、女性の労働力参加率と出生率の関係も正に転化した。しかし、残念ながら、その動きはまだ弱々しい。また何よりも団塊ジュニア世代が30歳台後半に入ってしまい、日本の出生「率」の回復が、出生「数」上昇のチャンスを逃してしまったことが悔やまれる。
しかし、今後、人口が大きく減りゆく日本の将来を考えるとき、働き手は無論のこと、将来の担い手(子どもたち)が生まれてくる状況を作っていくことが大切だ。つまり、男女が共によく働き、共に子育てをする「共働き社会」を実現していく必要がある。
そのために著者は、何よりも「日本的な働き方」を抜本的に改める必要があると強調する。
具体的には、日本の正社員に求められる三つの無限定性(職務内容、勤務地、労働時間)に歯止めをかけることだという。つまり、企業の命令に従って、①営業、企画、人事、経理などどんな職務でもこなす、②国の内外を問わず転勤する、③残業、休日出勤を厭わず働く、といった正社員の労働慣行を見直すべきというのだ。
男女雇用機会均等法などの既存法制も、この労働慣行を前提としている限り、むしろ、女性に対し、「日本的働き方=男性的働き方」を求める仕組みとして機能し、「差別禁止」を謳いながら、その実質は従来どおりの性別分業を維持する結果となっていると指摘している。
女性の本格的な就業に負の影響を与えている税制や社会保険制度(配偶者控除制度や第三号被保険者制度)の改革とともに、この「日本的な働き方」を改めることで、女性が本格的に働き、家計を支える存在となり、かつ、男女が共に子育てをする社会(共働き社会)が実現するという。
就職以来、30年近く、前述の無限定的な働き方をしてきた評者にとって、こうした指摘は、自らのこれまでの歩みを否定されたような一抹の寂しさを覚えるものの、間もなく本格化する人口減少社会を乗り切っていくためには、避けては通れない途であり、むしろ、「仕事と家族」の新しい楽しみ方かなと思う。時代は変わり、それにつれて人も変わっていくのだ。
厚生労働省(課長級)JOJO