東京・目白台の博物館「永青文庫」(細川護熙理事長)で開催される「春画展」(主催:永青文庫、春画展日本開催実行委員会)の詳細が明らかになった。開催期間は2015 年 9月 19 日~12 月 23 日。出品作品は約120点。前期約60点、後期約60点の入れ替え制。18歳未満は入館禁止。平日と土曜日は午後8時まで開館する。休祝日以外の月曜は休館。
日本で初めての大々的な春画展ということで大きな話題になりそうだ。
大英博物館の展覧会がきっかけに
葛飾北斎、鈴木春信、喜多川歌麿、菱川師宣、歌川国芳...。超有名な浮世絵画家の名前がずらりと並ぶ。ただし、作品はいずれも「春画」。男女が愛を交わす情景を描いたものだ。中にはユーモアに満ちたものもある。
江戸時代に制作された春画は2000~3000点と言われ、庶民から将軍、大名クラスまでが楽しんだ。世界各地にさまざまな「性画」があるが、日本の春画の量と作品レベルの高さは群を抜いているそうだ。高名な浮世絵師のほとんどは春画を手掛けており、春画研究なくして浮世絵研究は成り立たないといわれるほど。
これまで日本では、大きな展覧会のコーナーの一つや、多彩な出品作のごく一部で春画が展示されることはあったが、今回のように春画のみを大量に展示する「春画展」は初めて。きっかけになったのは2013年から14年にかけてロンドンの大英博物館で開催された「春画 日本美術の性とたのしみ」展だ。
大英博側からは、同展の準備段階で、日本での巡回開催の打診が日本側にあったそうだが、会場を引き受ける美術館や共催社が見つからなかった。様々な反響が予想されることから美術館などが「過剰に自主規制」した結果という。しかし、英国での同展が大成功を収めたことで、日本側でも開催への機運が急速に高まり、永青文庫が会場となることを引き受けることで開催が決まった。
手のひらサイズの「豆判」も
そんな経緯もあり、今回の春画展のキャッチコピーは、「世界が、先に驚いた。」。出品作品は、大英博物館の所蔵品などヨーロッパからの里帰り作品が19点、日本国内(国際日本文化研究センター、立命館大 、公益財団法人東洋文庫、三井記念美術館、岡田美術館、林原美術館、永青文庫、個人コレクター所蔵など)から102点。このうち67点は大英博の春画展でも展示された作品だ。出品作の多くは版画だが、筆遣いや色合いが生々しい「肉筆」も38点展示される。全体を「プロローグ」「肉筆の作品」「版画の傑作」など5章に分けて紹介する。
日本の「春画」の歴史は古く、平安時代にさかのぼり、鎌倉時代に製作されたものも現存している。今回展示される「稚児之草紙」などは、鎌倉時代の作品をほうふつさせるものだという。珍しいところでは室町時代に製作された「勝絵絵巻」や、江戸時代に流行った、手のひらサイズの「豆判」も展示される。「豆判」は携帯可能で所有者が互いに見せ合ったりしていたのではないかという。
会場の永青文庫は1950(昭和25)年、細川家に伝来する歴史資料や美術工芸品を後世に伝える目的で財団法人として設立された。73年に博物館登録され、毎年、4つの会期に分けて所蔵品などを公開展示している。今回のような大規模展の会場になるのは異例で、かなりの混雑が予想される。
細川理事長は「永青文庫は規模も小さく、至らないところの多い施設ですが、春画展開催への皆様の情熱と意義に応えて、及ばずながら、ご協力したいと考えた次第です」とコメントしている。
永青文庫は東京メトロ有楽町線護国寺駅から徒歩15分。入館料は大人1500円。高齢者・学生・団体などの割引や、チケットの前売りはない。