アップルやインテルの成功の本質
著者は、アップルやインテルの成功の本質は、国際的な「イノベーション共闘」であるとする。日本のかつての成功モデルとの大きな違いは、当初は「プレミアム品」である「新製品」を、国際分業を通じて一気に世界市場に普及させる「ディフュージョン」のプロセスを経て社会全体への新しい価値をもたらした点であり、また、この「ディフュージョン」を「自前」ではなく、国際的な共闘と分業を通じて一気に行う点である。そして、この共闘や分業を優位に進める鍵が標準化をはじめとする「知財マネジメント」なのであるが、筆者は、日本で「知財マネジメント」と言うといまだに良い技術について「単に知財権を取得すれば済むという風潮」が残っており、「知財マネジメント」の役割等が整理・理解されていない現状を憂慮するとともに、今後の「知財マネジメント」のあるべき姿を提示する。
90年代以降の世界をリードした経営者の一人であるIBMのサミュエル・パルミサーノ会長は、「ゲームのルールを変えたものだけが勝つ」と言い続けてきた。日本企業の「惨敗の方程式」は、別の言い方をすれば、新しくなってしまったゲームに旧態依然の戦い方で挑んでいるだけかもしれない。逆に、ゲームのルールを変えれば良いというものでもない。新しいゲームは、多くの人が参加し、楽しんでくれるものでなければ定着しない。この点、インテルやアップルの仕掛けた新しいゲームは、その商品の良さに加え、国際共闘・国際分業を通じて多くの人を楽しませてきたのだろう。日本企業もいつまでも負けているわけにはいかない。まずは今のゲームを理解し、「反撃」に向けた取組に期待したい。
銀ベイビー 経済官庁 Ⅰ種