新たな行政需要への対応
行政サイドはどうか。本来、自己責任原則を建前とすれば行政による後見的介入は望ましくない。この故に、注意喚起や危険防止のキャンペーン的な事業は、警察・消防など一部官署を除き、積極的には実施されてこなかった。
だが、平成21年(2009年)に消費者安全法が制定され、消費者庁が消費者の生命・身体の安全確保に取り組むようになって以来、状況は一変した。
被害者等の申出や事業者の報告義務などによって事故情報を一元的に収集し、原因を分析した上で再発防止の啓発等を行うようになったからだ。本書の「危険プロジェクト」が行政の正式な業務として引き継がれたかのような形だ。
例えば本書が問題視している機械式立体駐車場の使用上の注意も、先ごろ、消費者庁・国交省が立体駐車場工業会等の協力を得てステッカーを配布すると公表した。また消費者庁の「子ども安全メール」は、乳幼児の日常生活上の事故について全国からの情報を分析し、登録者へのメール配信によって注意喚起を行っている。