医学の道から転身した「改革者」
ところが、「交響曲の改革者」は意外なところに、登場しました。隣国フランスの、上記、ベルリオーズです。フランス南部の出身で、もともと医学の学校に進むためパリにでてきた青年は、パリでオペラ座に通い詰め、音楽の道を志すようになります。パリ音楽院に入学したのは26歳の時、といいますから、現代の尺度で考えても、大変に遅いスタートです。幼いころからトレーニングを必要とする演奏家ではなく、作曲家を目指したので、可能だったとも言えます。
パリで、最先端のオペラや文学や芝居に出会い、情熱を傾けたベルリオーズは、女性にも、熱情的にアプローチします。イギリスから来ていた劇団のシェイクスピア劇を見ていた彼は、主演女優スミスソンに一方的に恋をして、現代ならさしずめストーカー規制法に引っかかるぐらい熱烈アタックをします。売れない作曲家の青年とみられて冷たくあしらわれたとみるや、別のピアニストに猛烈アタック、こちらは婚約までこぎつけるものの、女性側の両親の反対にあって、彼女は別人と結婚する...。よくある話ですが、何事にも粘着質なキモオタ作曲青年ベルリオーズは失恋続きとなってしまうのです。