ドイツでウェーバーが「初のドイツ的オペラ」を完成させた頃、隣国フランスでは、一人の情熱あふれる作曲家が、斬新な曲の構想を練っていました。彼の名前はエクトル・ベルリオーズ、今日の1曲は彼の代表曲、「幻想交響曲」になります。
ベルリオーズ「幻想交響曲」
ウェーバーやベルリオーズは「ロマン派」の時代の作曲家に分類されますが、彼らはその前の「古典派」の時代を強烈に意識していました。だからこそ、ウェーバーは古典派の時代を通じて圧倒的に優位だったイタリアオペラの牙城を崩そうと考えたわけです。一方、ベルリオーズをはじめ、ロマン派初期の作曲家は、古典派の時代に完成された形式、「ソナタ形式」に対して挑戦を考えます。ソナタ形式とは、提示部~展開部~再現部という組み立てで書かれているクラシック曲のスタイルの1つで、ピアノ・ソロの曲でこの形式を使うと「ピアノ・ソナタ」となり、オーケストラのための曲でソナタを書くと、「交響曲」となります。古典派後期の巨匠、ベートーヴェンが、9つの素晴らしい交響曲を書いてしまったため、以後の作曲家たちは、それを超えることを目指し、四苦八苦することになります。それぐらい、ベートーヴェンの交響曲は斬新かつ完成度が高いものだったのです。当時の空気を再現すると、「ベートーヴェンの作品以上の交響曲はもう現れないだろう」といったところでしょうか。