"良書"との出会いの機会与えてくれた版元、町の書店
それにしても、米国の女性研究者が大学出版会から出したこのマイナーな本を、よくぞ邦訳したものだ。出版社は青土社。雑誌「現代思想」の版元なだけに、学際的な本を敢えて選んだものだろうか。更に、評者は自宅近くの小さな書店でこの本に出会った。書店主もよくぞ仕入れたものだ。
担当のチェック不足からか文章の乱れが散見されるのは残念だが、こうした中小の版元や書店が、それぞれに目利きをし、薄利でも気張ってくれていることが日本の出版文化に厚みを加えている。猟奇事件の加害者手記で世間を騒がす版元ではなく、こうした知的好奇心を満たす本を出す版元こそを、評者は大いに応援したい。
電子書籍やアマゾンもよいが、こうした偶然の出会いを思うと、やはり町の書店も捨てがたい。いささかアナログに過ぎるだろうか。
酔漢(経済官庁・Ⅰ種)