ドイツオペラを確立させた「魔弾」

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

「真のドイツオペラ」めざしたウェーバー

   ウェーバーは音楽家として成長し、ピアニストとして、またオペラの指揮者として活躍します。小さな歌劇場からキャリアを出発し、ザクセン王国のドレスデンで歌劇場音楽監督を務めている時、「真のドイツオペラ」を作ることを思い立ちます。

   ドイツに伝わる民話をもとにした小説を台本の基礎とし、舞台は当時ドイツ領だったボヘミアの森、という設定が非常にドイツ的、さらに、「魔弾」をあつかう猟師が主人公で、勇壮な狩人たちの合唱が出てくるところも、イタリアとは明らかに違う、「ドイツ風」の設定でした。専門的には、語りの部分も「レシタティーヴォ」といって旋律をつけてしまうイタリアオペラスタイルではなく、純粋にセリフとしてはなす「ジングシュピール」という形式――もちろん、地元のドイツ語を使用しているわけですから、観客はそのまま理解できるわけです――にしてあり、これははっきりと、イタリアオペラとの決別を宣言している様式でした。

   さらに、ウェーバーが計画的だったのは、この「とてもドイツ的なオペラ」を、地元ドレスデンではなく、もっとも支持されそうなプロイセン王国のベルリン――のちに「統一ドイツ」の首都になる都市――で、初演することを決意したことでした。彼の目論見どおり、このオペラは、ベルリンで熱狂的フィーバーを巻き起こし、以後記録的な上演回数を重ねます。そして、「ドイツオペラを確立した作品」として、記憶されることになったのでした。

   熱狂した観客の中には、当時まだ10歳になっていなかった少年リヒャルト・ワーグナーも含まれていました。彼もまた作曲家として「とてもドイツ的な歌劇」を作ることになるのですが、その話は、またの機会に書くことにしましょう...。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

姉妹サイト