欧州諸国でたかまる「わが国のオペラ」を求める動き
しかし、現代の日本で、字幕付きハリウッド映画に対し、日本語吹き替え版がじわじわと人気を高めているように、ヨーロッパのイタリア以外の国でも、「わが国のオペラ」を求める動きは、確実に高まってきました。旧体制、つまり、王侯貴族がパトロンとなる時代から、革命騒ぎを経て市民が力を持ち始めるようになると、そういった動きがより顕著になってきます。
天才モーツアルトでもなしえなかった、「ドイツ人によるドイツ語の、ドイツを舞台にしたドイツ風オペラ」を作ったのは、彼の遠い親戚でした。(ちなみに、モーツアルトのドイツ語オペラの代表作「魔笛」も舞台はエジプト...ハリウッド映画が「宇宙」をしばしば舞台にするのと同じく架空の舞台で、ドイツ語オペラではありますが、イタリアオペラ的な影響が感じられ、ある意味突飛な舞台設定です。)モーツアルトの妻コンスタンツェは旧姓をウェーバーといい、その23歳年下のいとこが、カルル・マリア・フォン・ウェーバーなのです。音楽家の一族だったのですね。モーツアルトは現在ほど世界的に有名ではありませんでしたが、ウィーンで活躍した彼のことは、ウェーバーはかなり意識していたようです。父親が義理の甥であるモーツアルト2世にすべく、少年カルルに英才教育を施したからです。