在宅看取りを支える「地域まるごとケア」
永源寺地区の看取りの文化を支えているのは、著者の花戸医師だけではない。本書では、
・ご近所さんも介護チームの一員
・病院と在宅ケアをつなぐMSW
・病と生きる人生に寄り添うケアマネージャー
・薬の飲み忘れを解決した薬剤師さん
・クラスメートがサポーター
・ヘルパーさんは縁の下の力持ち
・在宅ケアを支える訪問看護師さん
・生前からかかわるお坊さん
――と、永源寺地区のケアを支える人々について、それぞれ一節を割き、活躍の様子が紹介されている。
著者は言う。
「私は一人ひとりの患者さんだけでなく、永源寺という地域全体を診たい。たとえ大きな病院がなくても、皆さんの一軒一軒のお宅が病室であり、道路が廊下、携帯電話がナースコールであればいい」
「それを支えるのは、たった一人の医師ではなく、看護師さん、薬剤師さん、介護のヘルパーさんやケアマネージャーさん、市役所の方やその他たくさんのスタッフと、永源寺に住む地域の人びとだ」
「花戸の専門は何かと問われたとき、内科でも小児科でも在宅医療でもなく、『私の専門は永源寺です』と自信を持って答えられる医師になりたいと思っている」
本書を通じて、自宅で天寿を全うできる地域を実現するためには、「医療だ」「介護だ」などという狭い視野を捨てて、ご近所さんやお坊さんを含む地域の人々みなが一緒になって、地域全体を支える気持ちで取り組むことが欠かせないことを改めて感じた。
「地域まるごとケア」、実にいい言葉だ。
厚生労働省(課長級)JOJO