地方創生の取り組みが進められるなか「地方で暮らす、日本が変わる」をテーマにしたフォーラムが2015年5月31日、東京ミッドタウン(東京都港区)で、日本経済新聞社主催、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局と内閣府地方創生推進室の共催により開催され、石破茂地方創生担当相の講演や、「島耕作」シリーズで知られる漫画家の弘兼憲史さんらを迎えてのトークセッションが行われた。
地方創生は「今、やらないといけないもの」
フォーラムは2部構成。第1部ではまず、石破大臣が「地方への新しいひとの流れをつくる」と題した基調講演。大臣は、食料やエネルギー、出生率の問題を踏まえ、今後「東京だけで日本が存続していくのは不可能」と地方移住の必要性を強調した。その上で「東京から地方へ移住を検討している人は4割に達する」というデータを取り上げ、移住希望者を支援する政府の取り組みを紹介。それぞれのニーズに合せて仕事や住居、教育環境などの情報提供を行う「全国移住ナビ」や、東京駅八重洲口に設置した質問窓口「移住交流情報ガーデン」などの積極的な利用を呼びかけた。
続いて、石破大臣と20年以上親交のある弘兼さんが登壇。「今後の地方のあり方」をテーマにトークセッションを行った。企業の地方移転に話が及ぶと、石破大臣が「(島耕作シリーズに登場する)初芝電器って地方に行きませんか?」と提案する場面も。弘兼さんは石破大臣に「地方創生と日本の将来」について質問。大臣は地方創生について、50年から100年先のことを見据えた上で「今、やらないといけない」と力強く答えた。
また、移住の受け入れを行う側である地方自治体を代表し、熊本県の人気ゆるキャラ「くまモン」が登場。同県の名産であるスイカを石破大臣に手渡した。
地方移住で実現した「子どもの成長を間近で見守ることのできる暮らし」
第2部では、地方移住を実現した4人のパネリストが登場。内閣府の平将明副大臣を司会に、「地方居住で始まる新しい未来」をテーマにディスカッションを行い、地方移住の魅力や可能性を語った。結婚を機に脱サラ、北海道遠軽町で新規就農を果たした「農家民宿えづらファーム」代表の江面陽子さんは、「1日3食を家族とともに食べられ、子どもの成長を間近で見守ることのできる暮らしを実現できた」と地方移住の喜びを語った。
政府が行う「地域おこし協力隊」の一員として島根県海士町に移住、教育の魅力化と地域活性化を同時に行う「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」に携わっている奥田麻依子さんは、「社会に対して当事者意識を持てる点」が地方で暮らす魅力の1つだと語った。
また、東日本大震災を機に故郷の宮城県へ移住、女川町で被災地における起業支援などを行っているNPO法人アスヘノキボウ代表理事の小松洋介さんは、地方創生について「個人というよりも、どれだけ地域を巻き込むか」が重要だと力説した。
徳島県神山町で、過疎地をビジネスの場にする事業を展開しているNPO法人グリーンバレー理事長の大南信也さんが、地方に住むことの魅力を伝えるためインターネット中継で現地から出演。「東京はお金を使ってサービスを受け取る場所だが、地方はある物を使ってサービスを創りだす場所だ」と、地方居住の魅力を独特の視点で紹介した。
平副大臣はディスカッションをまとめる形で、「移住を受け入れる側も変わらなければいけないし、する側もあまりお客様感覚ではいけない」とコメント。その上で、移住者と地域のマッチングや情報収集の重要性に触れ、各自治体が主催するイベントや政府の行う支援策の活用を呼び掛けた。