自由主義陣営の知識人の怠慢
チョムスキーの義憤の矛先は、為政者や財界、メディアに限らない。言論の自由が保障された国にあって、批判や中傷を恐れて声を挙げない知識人をも槍玉に挙げる。
言論の自由が認められていないトルコでの指導的知識人の闘いを挙げ、「勇気があって、誠実で高潔な知識人とはこういう人たちをいう」「トルコの刑務所というところはハンパではない。彼らが立ち向かわなければならないものに比べたら、この国の人間が抑圧などということ自体、恥ずかしい」とする。そして続ける。「主流から外れたことをいえば、知的ジャーナリズムからは批判されるかもしれない。誹謗され、断罪され、ひょっとして脅迫状の一通も受けとるかもしれない。しかし、だからなんだというんでしょう。」
評者はここで、美術家にして社会活動家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)が中国政府に拘禁されていた間にどのような仕打ちを受けたか、想像を巡らさずにはいられない。同時に、公務員への罰則を強める特定秘密保護法制定に民間人が反対して「言論の自由が抑圧される」と叫んでいたことを思い起こす。