「作家」としての露出が増えている、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん。このほど選考があった「三島由紀夫賞」では残念ながら"僅差"で選に漏れたが、"文筆活動"はなお盛んだ。2015年5月26日には、かねてよりそのもとに弟子入りしていたという俳人・堀本裕樹さんとの共著「芸人と俳人」(集英社)が出版される。同書では、当初「恐ろしい」と思っていた俳句に挑む様子が描かれている。
小説家に先駆けて俳人デビューしていた
純文学のデビュー作品「火花」で注目された又吉さんだが、高校生の頃から俳句や短歌に興味を持ち、その後は「自由律俳句」を作るようになった。09年には放送作家のせきしろさんとの共著で「カキフライが無いなら来なかった」や「まさかジープで来るとは」などの自由律俳句の本を出版しており、小説家デビューより俳人としてのデビューが先だったといえる。
又吉さんはその後、俳句好きが高じて気鋭の俳人である堀本さんに弟子入り。12年には集英社の月刊文芸誌「すばる」10月号から、堀本さんとのコラム連載「ササる俳句 笑う俳句」をスタートさせている。
当初は俳句の創作について「恐ろしい」と話していたという又吉さんだが、堀本さんのもとでの2年間"修行" を積み徐々に俳句の面白さに開眼していく。2人の最新刊「芸人と俳人」では、その過程が描かれているほか、20句を超える実作俳句や、書き下ろしエッセイも収録。言葉を生業とする2人の対話を通じて、お笑いと俳句の知られざる共通点が明らかにされていく。
又吉さんと堀本さんはまもなく、新作俳句などを発表するメールマガジン「夜の秘密結社」を創刊する。申し込み開始は5月20日から。1か月2回配信予定で、月額400円(税別)。
「火花」は芥川賞ノミネートの可能性も
又吉さんの「火花」は「笑いとは何か、人間とは何かを」をテーマにした純文学作品。15年1月発売の「文学界」(文芸春秋)2月号で発表されたが、同誌が1933年の創刊以来初めてとなる重版がかかるほど話題になった。作品は3月に単行本化された。
その後「火花」は、新鋭作家の純文学作品を対象にした三島由紀夫賞の候補になったが惜しくも落選。出版関係者によると、今年度上半期の芥川賞(7月中旬発表)にノミネートされる可能性もあるという。