2週間で書き上げ
もちろん、2幕もののしっかりしたオペラを1~2週間で書き上げるのはさすがに不可能で、実は、ロッシーニ自身が書いたほかのオペラや管弦楽曲からの「拝借」がいろいろとみられるのですが、それにしても、それらの「音楽要素の引き出し」を総動員して、劇場や興行師の求めるとおりの作品を作ってしまう、ロッシーニの力量たるや、恐るべきものと申せましょう。
結果的に、「生涯で1番時間をかけないで書いた」このオペラは、ロッシーニ最大のヒット作となります。同じ台本で他の大御所がオペラをすでに書いていたために、1816年、ローマでの初演時は、その大御所を支持する勢力の妨害もあってうまくいきませんでしたが、2回目の上演から、人気は爆発し、彼の名声は、遠く、北ヨーロッパのフランスまでとどろくことになり、彼は、後半生をパリで暮らすことになります。ウィーンでは、かのベートーヴェンも、ロッシーニの実力を認めていたといわれていますから、彼は、オペラが人々の娯楽の中心にあった時代の、もっとも恵まれて、名声を得た作曲家といえるでしょう。
彼の後半生にも、また素晴らしい作品と、面白い人生の物語があるのですが、それは、またいつか、回を改めて書くことにしたいと思います。
本田聖嗣