風の画家・中島潔はなぜ「平成の地獄絵」を描いたのか

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地獄に地蔵菩薩を描いた「地獄心音図」

   5枚組となる地獄絵が1枚描き上がるたびに、西所氏はアトリエを訪ね、画家の心の軌跡を追う。その合間に中島氏の妹や姉、広告代理店で働いていたときの社長や同僚、1歳から高校卒業までを過ごした故郷・佐賀県の友人などに取材。わらべ画から女性画、源氏物語五十四帖、清水寺の襖絵、唐津くんち祭り、そして地獄絵へと向かっていく絵の変遷に、独学で日本画を学び、自らを追い立てながら厳しい道のりを歩んできた画家の人生を重ねて人物ノンフィクションに仕上げた。

   12ページのカラー口絵には、中島氏の代表作のほか、六道珍皇寺が収蔵する地獄絵3枚と中島氏が描いた5枚組の「地獄心音図」が収められている。

   「地獄心音図」は4月29日から5月6日までのゴールデンウイーク期間中に六道珍皇寺で特別公開された。5枚目の地獄絵に、救いの手をのばす地蔵菩薩が描かれている。最初は考えていなかったのに、描き進めていくうちに「悪いことをして罰せられても悔い改めれば、生き直すことができるよ」との思いをのせた。「地獄心音図」はこれから全国を巡回し、3年後には同寺に奉納される。襖絵も地獄絵も奉納されたのは京都のお寺。伝統を大切にしながら常に新しいものを取り入れていく京都の奥深さがわかる一冊でもある。

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