難民や無国籍者ら「境界の民」の存在を認識せよ

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   「地中論」(星海社)や「和僑」(角川書店)、「中国・電脳大国の嘘」(文藝春秋)と、これまでの著作では主に中国の「いま」を伝えてきたノンフィクション作家、安田峰俊氏。新刊の「境界の民」(角川書店)では、専門の中国だけでなくベトナムや台湾に関連するストーリーも登場する。

   タイトル通り、今回の題材は無国籍者や難民、少数民族といった「境界の民(マージナルマン)」だ。日本にも多く住むこうした人々のリアルな姿を描き出している。

  • 境界の民
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好感度高い台湾の学生を「怖い」

   冒頭、安田氏が足を運んだ在日ベトナム人寺院の様子が書かれている。そこで出会った若者たちやその親――元難民一世とその子どもたちである二世――とのやり取りの描写が興味深い。この章では、若い在日ベトナム人が日本での「立ち位置」に悩む姿が垣間見える。一方日本人にとって、「難民」と言えば「弱くて不幸で貧乏で」という負のイメージを持ちがちだが、実際は日本の街中で、あるいはインターネット上で当たり前のようにすれちがい、会話を交わしている相手だったと気づかされる。「私たちの一方的な想像だけで解釈してはいけないのである」と、安田氏は呼びかける。

   2章分を割いて取り上げられたウイグルについては、中国政府に弾圧される少数民族のウイグル人と、それを「支援」する日本との「複雑な関係」を、現地のウイグル人取材を交えて解説。また上海に住む日中ハーフの女性と中国国籍を持ちながら日本の義務教育を受けて育った人物、かつての中華民国体制下の軍閥の腹心の子孫で、今は「闇社会」に生きる男、こうした「国民国家体制の『エラー部分』に弾き出されてしまった人たち」が次々に登場する。

   最終章では、2014年春に台湾で起きた「ヒマワリ学生運動」に焦点を当てている。自ら現地に赴いた安田氏は、議場を占拠した学生たちの運動に直接触れる。好感すら持てる学生たちの振る舞いに、なぜ安田氏は「怖い」と感じたのだろうか。

   「身近な境界の民たちの存在を認識することが必要だ」。安田氏は巻末で、こう主張している。

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