人間の脳に比べあまりにも膨大な電力消費量
そして最後に再度、コンピュータと人間の協働によるイノベーションの実現に期待を込めている。
そこに至るまでには様々な技術的課題を克服する必要があるというのであるが、特に印象的だったのは、電力の問題である。ワトソンの消費エネルギーは、フルスロット稼働時で8万5000ワットの電力を要するが、人間の脳は、20ワットしか使わないというのである。省電力化を進めたとしても、コンピュータが人間の脳に匹敵するほどのエネルギー効率を獲得することは非常に困難なことであると言えよう。もしかするとこの点が最大の課題になるかもしれない。
また、本書では、コグニティブコンピュータによる具体的なバラ色の予想(期待)が描かれているが、いずれの予想も現在の我々のビジネスや生活から想定の範囲内であり、本文中では破壊的なイノベーションと述べながらも、その点に限界が見られた。本書で述べられている例よりも遙かに利便性の高い商品やサービスが出現し、社会経済を抜本的に変化させることができたならば、それこそが破壊的なイノベーションと言えるのかもしれない。ついでに言えば、そのときそれを担う企業や人材が我が国から出てくることを期待したい。
経済官庁 室長級