バッハが作曲技術を総動員した「平均律」

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野心的...実は、子供たちの教育曲集として発案

   鍵盤楽器のために、すべての長調と短調を網羅して曲集を作るという「平均律クラヴィーア曲集」は、後世から見ると大変野心的な試みに見えますが、もとは、子だくさんだったバッハが、子供たちの教育曲集として発案されたと考えられています。その過程で「どの調でも魅力的な曲を書いていこう」というバッハの壮大な決意のもと、彼の持てる鍵盤楽器のすべての作曲技術を総動員して、作曲した結果、このような、偉大な金字塔を打ち立ててしまったといえるかもしれません。

   教会で演奏する受難曲やカンタータと違って、「家庭内で演奏される」という性質が強い曲集だったため、バッハの死後しばらくは忘れ去られていましたが、バッハが再評価されるとともに、演奏機会も増え、かのショパンは、「毎朝平均律クラヴィーア曲集から必ずピアノを弾き始める」と言い残し、彼自身「24の前奏曲」という曲集を残していますし、近代ソ連の作曲家ショスタコーヴィチなども「24の前奏曲とフーガ」というバッハを意識した曲を残しています。また、グノーは、平均律第1巻の第1番の前奏曲を伴奏として上にメロディーをつけ、「アヴェ・マリア」という有名な曲を作ったりしています。

   優れた鍵盤楽器作品としてあらゆる時代の音楽家に愛された「平均律クラヴィーア曲集」は、上記のように、多くの作曲家を刺激しましたが、現代でも、クラシック・ピアニストを目指す人たちほぼ全員が、世界中で、この曲集を学び、演奏しています。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。
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