本屋さんが絶賛する気鋭作家の新作
インタビューに呼ばれたり、SNSで推薦されたり、書店員からの評価がめっぽう高い彩瀬まるという作家がいる。今月発売された彼女の最新作は、桜の季節が舞台だ。その名も『桜の下で待っている』(1512円、実業之日本社)。桜の木を縫うように新幹線が走る、ほのぼのした表紙をめくると、東北新幹線で北上する男女5人の「ふるさと」にまつわる連作短編集が始まる。第5話はタイトルと同じ『桜の下で待っている』だ。両親が離婚している主人公の「さくら」は、自分には「ふるさと」と呼べる場所はないと思っているが...。新幹線の隣の座席に座っていそうな"普通顔"の主人公の心情がていねいに描かれ、自然と話に引き込まれた。「はじまりの物語」というだけあって、読後はちょっと気持ちがいい。