日本では3月3日は「耳の日」だが、世界保健機関(WHO)も「International Ear Care Day」として、耳の健康や障害への関心を高める日としている。
これに先立ち、WHOは2015年2月27日、世界で11億人近くの若者がスマートフォン(スマホ)や音楽イベントなどでの大音響の影響で、深刻な難聴リスクに晒されていると勧告した。
通勤通学中知らず知らずのうちにボリュームを...
WHOの調査では、中・高所得国に住む12~35歳までの約50%がスマホなどの携帯音楽プレーヤーで、約40%が音楽やスポーツイベントで、難聴の危険があるレベルの大音量を耳にしているという。
勧告では危険なレベルの音量の例として85デシベルで8時間、100デシベルで15分という数値を示し、これを下回るほど難聴のリスクを下げることが期待できるとしている。日本の環境省が示している「騒音の目安」によると80~90デシベルに該当するのは「航空機の機内」「ゲームセンター店内」「パチンコ店内」としており、85デシベルはかなり大きな音と言えよう。
屋外でイヤホンを使って音楽を聞いているときは、音量を上げてしまう傾向にあるようだ。東京都生活文化局が2008年におこなった「イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査結果」では、静かな環境でイヤホンを使用した場合は60デシベル未満が快適だと感じるが、70デシベル以上の騒音下では80デシベル以上を快適と感じる人が多いという結果が出ている。やや古いデータだが、空気の振動の強さによる音の大きさ(dB SPL)を測定したもので、調査後数年で急激に数値が変わるとは考えにくい。70デシベル以上というと、「幹線道路周辺」「在来鉄道車内」「バスの車内」に当たる。通勤通学中にスマホの再生音量を85デシベルまで上げてしまっている可能性はある。
WHOは対策として、日常的にオーディオ機器の音量を抑える、連続して聞かないよう休憩をとる、環境音を遮断できるノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンを使用する、大きな騒音が予想されるイベントなどには耳栓を持っていく、スマホなど携帯音楽プレーヤーの使用は1日1時間までにすることなどを推奨している。勧告で示された「85デシベルで8時間」は「上限」と考えて、普段はできるだけ音量を絞るのがベターだろう。