2014年の蘭寿(らんじゅ)とむ(花組)、壮一帆(そう・かずほ、雪組)に続いて、15年は2月15日に宙組の鳳稀(おうき)かなめが宝塚に別れを告げた。そして5月には星組の柚希礼音(ゆずき・れおん)が退団を控えている。この2人の卒業により、14年春に行われた百周年記念の祭典の際に最前列に並んだ5人のトップスターのうち4人が宝塚を去ることになる。
花組はすでに明日海(あすみ)りおがトップスターとして実績をあげ始め、夏には台湾公演が控えている。雪組は早霧(さぎり)せいなの大劇場トップお披露目作品「ルパン三世」が今月2日、好評のうちに千秋楽を迎え、20日から東京公演がスタートする。
鳳稀の後は同じ宙組の朝夏(あさか)まなとのトップ就任が決まっており、その大劇場お披露目公演には、03年に星組で上演され、芸術祭の演劇部門で優秀賞を受賞した「王家に捧ぐ歌」(オペラ「アイーダ」の宝塚版)の再演が用意されている。
若手スターの組替えも
現在の宝塚で圧倒的な人気を誇る星組の柚希のサヨナラ公演も2月6日に大劇場で幕が上がった。柚希の後任には、専科の北翔海莉(ほくしょう・かいり)の異動が14年12月に発表された。北翔は歌、踊り、芝居と三拍子そろった実力派だが、実は専科からトップスターとして組に再配属される例はほとんどない。このニュースはファンにとってちょっとした〝衝撃〟だった。ファンはこうした劇団の「人事」にも敏感だ。このときは同時に星組と宙組の若手スターの組替えも発表され、ツイッターなどが大いに賑わった。これにより、今年6月以降の各組の布陣が固まったことをファンも知り、これからの宝塚をにぎやかに展望するのである。
昨年の祭典の時に最も若いトップスターだった月組の龍真咲(りゅう・まさき)が、6月以降は最もキャリアの長いトップとして、宝塚を引っ張る立場となる。台湾公演を任された花組の明日海も、新しい宝塚の顔として活躍することになるだろう。
いかにもめまぐるしいが、常に新陳代謝を繰り返しながら歴史をつないでいく、これも宝塚の大きな特徴だ。
ファンを組み込んだタカラヅカのシステム
長く応援してきた生徒が退団すると、ファンの一部は彼女らとともに宝塚を離れていく。能う限りの愛情を注いだ対象がいなくなり、その虚脱状態を脱するため芸能界に転身するスターを追っていくファンもいれば、熱がさめたように観劇そのものをやめてしまう人もいる。宝塚に傾注してきたエネルギーを普通の生活に向けられることになり、「社会復帰しました」と笑わせる人もいた。
ところが、そのまた何割かは、しばらくするとまた宝塚に戻ってくる。インターバルは人それぞれ。数年間ほかの舞台を見た後という人もいれば、結婚し、子供の手が離れたころ、という人もいる。ライフサイクルの何かのきっかけと、宝塚の新陳代謝のタイミングがシンクロしたときがまさにそのときか。それが、ファンを組み込んだタカラヅカのシステムのようにみえる。
「宝塚で良い作品を見た時の楽しさって格別な気がする」
「そう、貴女(生徒)も幸せ、私も幸せという感じ」
この幸せな関係が続く限り宝塚歌劇も続くだろう。100年続いてきたのだから。
101年目のラインナップもほぼ出そろった。百周年という〝祭りのあと〟の宝塚にも注目だ。(おわり)