ファンを組み込んだタカラヅカのシステム
長く応援してきた生徒が退団すると、ファンの一部は彼女らとともに宝塚を離れていく。能う限りの愛情を注いだ対象がいなくなり、その虚脱状態を脱するため芸能界に転身するスターを追っていくファンもいれば、熱がさめたように観劇そのものをやめてしまう人もいる。宝塚に傾注してきたエネルギーを普通の生活に向けられることになり、「社会復帰しました」と笑わせる人もいた。
ところが、そのまた何割かは、しばらくするとまた宝塚に戻ってくる。インターバルは人それぞれ。数年間ほかの舞台を見た後という人もいれば、結婚し、子供の手が離れたころ、という人もいる。ライフサイクルの何かのきっかけと、宝塚の新陳代謝のタイミングがシンクロしたときがまさにそのときか。それが、ファンを組み込んだタカラヅカのシステムのようにみえる。
「宝塚で良い作品を見た時の楽しさって格別な気がする」
「そう、貴女(生徒)も幸せ、私も幸せという感じ」
この幸せな関係が続く限り宝塚歌劇も続くだろう。100年続いてきたのだから。
101年目のラインナップもほぼ出そろった。百周年という〝祭りのあと〟の宝塚にも注目だ。(おわり)