リストを源にピアノ曲の伝統の下を流れる地下水脈
この曲は確かにドビュッシーらしいハーモニーと、ピアノという楽器の特性を活かした、素晴らしい響きで水の様子を描写しています。しかし、当時のフランス音楽の先端を走っていたドビュッシーにしては、なぜいまさら、水にこだわりを見せたのか、少し疑問です。
これは、私の想像ですが、13歳年下だが、有力なライバルとなるであろう才能、ラヴェルに刺激されたのではないでしょうか。一回りも年齢が違うので、まだまだこの時のラヴェルは頭角を現し始めた、という段階でしたが、その彼が「水の戯れ」という名曲を1902年に発表しているのです。それは、すでに名のあるドビュッシーでさえ、衝撃的だったのでは...と思います。そして、その答えが、「水の反映」に込められているような気がしてなりません。
ラヴェルの作品はリストの作品にインスパイアされ、ドビュッシーの作品は、ラヴェルの作品に刺激されて生まれたとしたら、水によってつながる、クラシック曲たちの系譜、といったところでしょうか。もちろん、本人たちは、何も言い残していませんが、それは、地下水脈のように、ピアノ曲の伝統の下を流れているのです。
本田聖嗣