フランスに流れる「水」を楽譜に...国民的作曲家ドビュッシー

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リストを源にピアノ曲の伝統の下を流れる地下水脈

   この曲は確かにドビュッシーらしいハーモニーと、ピアノという楽器の特性を活かした、素晴らしい響きで水の様子を描写しています。しかし、当時のフランス音楽の先端を走っていたドビュッシーにしては、なぜいまさら、水にこだわりを見せたのか、少し疑問です。

   これは、私の想像ですが、13歳年下だが、有力なライバルとなるであろう才能、ラヴェルに刺激されたのではないでしょうか。一回りも年齢が違うので、まだまだこの時のラヴェルは頭角を現し始めた、という段階でしたが、その彼が「水の戯れ」という名曲を1902年に発表しているのです。それは、すでに名のあるドビュッシーでさえ、衝撃的だったのでは...と思います。そして、その答えが、「水の反映」に込められているような気がしてなりません。

   ラヴェルの作品はリストの作品にインスパイアされ、ドビュッシーの作品は、ラヴェルの作品に刺激されて生まれたとしたら、水によってつながる、クラシック曲たちの系譜、といったところでしょうか。もちろん、本人たちは、何も言い残していませんが、それは、地下水脈のように、ピアノ曲の伝統の下を流れているのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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