先週の「水の戯れ」を作曲したラヴェルと、人気、実力とも伯仲していたといわれる、同じフランスの同時代の作曲家に、クロード・ドビュッシーがいます。この人は、フラン時代の紙幣にも登場していますから、(旧20フラン札)、国民的作曲家といってもいいでしょう。
今日の作品は、ドビュッシーの代表作でもある、ピアノのための曲集「映像 第1集」の1曲目、「水の反映」になります。
奇天烈好き国民性が紡いだ「印象主義」的な音の世界
ドビュッシーは、ラヴェルよりは13歳年上、「水の反映」を書いたころには、すでに、フランスを代表する作曲家として名高い存在でした。彼は、フランス独自の音楽を作ろうとした、フォーレなどの流れを汲んでいますが、さらに、彼独特の音階や調性をつかい、いわゆる「印象主義」的な音の世界を作り出しました。若いころは苦労しましたが、オーケストラ作品の「牧神の午後への前奏曲」や、オペラ「ペレアスとメリザンド」といった作品で彼の名は一躍楽壇で評価されることになります。
ちょうどそれは、印象派といわれる画家たちが、アカデミーを離れて、自分たちの絵画を追及していた結果、独特の世界に人々が魅せられて、評価が高まっていた時期と重なります。
今では、印象派もドビュッシーも、フランスを代表する芸術家です。
フランスは、今も昔も、伝統を大事にするが、革新好き、という傾向があります。街並みにしても芸術にしても、グルメにしても、伝統は必ず踏まえるのだが、とても新奇でどこか奇天烈なものを喜んで受け入れます。そういった国民的性格が、彼らの芸術を紡いできたといってもいいでしょう。