綿密な取材で描かれる新人ケースワーカーが遭遇した生活保護の現場

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一人一人の人生に向き合うケースワーカーの仕事

   本書の中で、義経の先輩は、ケースワーカーの仕事について、こう語る。

「我々生活保護のケースワーカーほど、区民一人一人の生活に入り込む公務員はいません」
「人の住まいを見るということは、人の暮らしを見ることです」

   ケースワーカーは、受給者一人一人の生活、そして、ときに人生の岐路に立ち会うだけに、その責任は大きい。

   義経の配属初日、うつ病で自殺未遂を繰り返す中年男性が義経に電話をかけてきた。

「これから死にます」

   近所に住む親戚に連絡すると、

「あーそれいつものことなんですわ」

   「もう狼少年みたいなモンなんで放っておいてもいいですよ」との返事。

   それでも気になって、再度の電話連絡を試みるもののつながらない。同僚からは「この仕事、1コ1コ真剣にやってたら身がもたないから、適度に力抜いた方がいいよ」とのアドバイス。

   しかし、翌朝出勤すると、ビルから飛び降りて亡くなったことを知り、茫然自失。同僚がなぐさめてくれる。

「どうしようもなかったよ、この場合」
「正直、この仕事してるとたまにあるから、こういうこと」
そして、「ここだけの話、1ケース減って良かったじゃん」

   そんな不謹慎な言葉に対して、義経の返事は「で、ですよね」

   失意の中、本人のアパートに遺品整理に出向く。亡くなった男性の暮らしぶりから本人の「生きる努力」を発見し、思い直す。

「ダメだ。それ言っちゃあ、何か大切なものを失う...気がする...」

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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