ラヴェル「水の戯れ」 邦訳題名がすくい切れなかった印象派先駆の意図

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原題にはリストの作品に対するリスペクトも

   ここが翻訳の難しさですが、ラヴェルのこの曲の原題は「ジュ・ドー」。リストの曲の原題も、「ジュ・ドー・ア・ラ・ヴィラ・デステ」です。リストが「エステ荘の噴水」なら、ラヴェルの曲も「噴水」と訳すのが、よいのでしょうが、それではつまらない、と、「水の戯れ」という文語調の翻訳がなされ、広く知られています。確かに、噴水における「水の戯れる様子」を描写した曲にはふさわしいのかもしれませんが、かえってこの邦訳題名が、本来噴水であるという重要な要素を落としてしまっているために、作曲者の意図を曲げているような気がしてなりません。

   そこには、人間のデザインによって動かされている水の風景、という意味と、印象派音楽の先駆としてのリストの作品に対する、ラヴェルのリスペクトも含まれているはずだから、です。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。
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