次から次へと表情を変える水の流れを描写
リストの作品は、本人の意図はともかく、音楽的における「印象派」的なハーモニーを先取りしたものだったのです。
印象派芸術が花開いたのは、19世紀末のフランスでしたが、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したラヴェルが、1901年、つまり20世紀最初の年に、作曲したのが、「水の戯れ」です。リストと同じようにピアノの技巧を必要とする曲ですが、水が自由自在に表情を変えて、たゆたったり、時には激しく流れたりする様子が描写されています。絵画ほど具体的に事象を描写できない音楽ですが、絵画とちがって、「時間」を追体験できますから、この曲を聴くと、あたかも、水の流れを次々に見せられている気分になります。
ごく普通の川や池や海の水は、定点で観察する限り、一定の似た動きを繰り返すだけのように見えますが、この曲に描かれた水は、次から次へと表情を変えます。 なぜかというと、この曲は、まさに人によって作られた水のアート、「噴水」を描いたものだからです。