ラヴェル「水の戯れ」 邦訳題名がすくい切れなかった印象派先駆の意図

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次から次へと表情を変える水の流れを描写

   リストの作品は、本人の意図はともかく、音楽的における「印象派」的なハーモニーを先取りしたものだったのです。

   印象派芸術が花開いたのは、19世紀末のフランスでしたが、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したラヴェルが、1901年、つまり20世紀最初の年に、作曲したのが、「水の戯れ」です。リストと同じようにピアノの技巧を必要とする曲ですが、水が自由自在に表情を変えて、たゆたったり、時には激しく流れたりする様子が描写されています。絵画ほど具体的に事象を描写できない音楽ですが、絵画とちがって、「時間」を追体験できますから、この曲を聴くと、あたかも、水の流れを次々に見せられている気分になります。

   ごく普通の川や池や海の水は、定点で観察する限り、一定の似た動きを繰り返すだけのように見えますが、この曲に描かれた水は、次から次へと表情を変えます。 なぜかというと、この曲は、まさに人によって作られた水のアート、「噴水」を描いたものだからです。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。
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