仏「印象派」絵画に多大な影響
リストは、一時このエステ荘に滞在していました。そして、ピアノ曲集「巡礼の年 第3年」に、エステ荘を題材とする3曲を作曲し、収録したのですが、その中でも特に「エステ荘の噴水」は、噴水を描写する華麗なるピアノのパッセージが人気で、単独でもよく演奏されます。
ヴィルトオーゾで一世を風靡したリストらしい、華やかな曲ではありますが、この時期のリストの心境や、他の作品を見ると、決して、華やかだけではない、人生の苦難と長い道のりを感じさせる、奥深い曲であることがわかります。
同時に、いつでも、音楽の新しいアプローチを模索していたリストらしく、次の時代を感じさせる要素もあります。次の時代、とは、音楽におけるロマン派の次の時代、近代の音楽です。「水」をモチーフに絵画の新しいムーブメント、「印象派」を生み出したフランスに、音楽として、多大なる影響を与えたのです。
本田聖嗣