核物質管理の重要性
人を殺すなかれという、どの宗教でも共通であるはずの徳目を、教義を悪用してないがしろにするテロ集団にすれば、敵と見なす国の都市で核物質を撒き散らすという重大な背徳も大義あることになりかねない。徒に恐怖心を抱くべきではないにしても、事態は相当に深刻なようだ。
また、厳正な核物質管理の実を挙げるには、それぞれの国家における的確な法令順守・執行体制の確立が必要不可欠だ。然るに、日本と異なりこの点で甚だ不安のある他国において原発新設が続くことに評者は不安を感じる。そうした国では深刻な事故が現にあり、それが未だ公表されていない、という可能性も捨てきれまい。
放射性物質以外の汚染物質の越境は現存する。もし仮に極低線量の被爆が大きな問題であるとするのであれば、国内の原発の当否を論じる以前に、海外からの汚染リスクを念頭に、より積極的な事故防止の技術協力とそのための基盤構築こそが急がれるのではなかろうか。