2002年に独立した東ティモールでは、水や電気、道路といったインフラがまだ整っているとは言えない。なかでも衛生環境の整備は、住民が健康な暮らしを営むうえで急務となっている。
カメラマン・会田法行氏の「トイレをつくる 未来をつくる」(ポプラ社、税別1500円)は、日本では「あって当たり前」のトイレが現地ではいかに貴重で、また人間が生きていくうえで欠かせないものだと改めて気づかせてくれる。
「この穴、なんの穴でしょう?」
本書は、会田氏が東ティモールの首都ディリからバスで7時間の場所にある山村で撮影した写真と、子どもでも読みやすい平易な表現を用いた文章で構成されている。いわば写真をふんだんに使った絵本だ。
「フランシスコさんが穴を掘っています。せっせ、せっせと穴を掘っています。この穴、なんの穴でしょう?」
この文が書かれたページには、ひとりの男性が腰の高さまで掘られた大きな穴に入って、シャベルで土をかき出している写真が見開きで広がっている。これは、村民によるトイレの建設作業のひとコマ。東ティモールの農村部ではトイレが普及しておらず、屋外での排せつが当たり前だった。だが、地面に放置された排せつ物にはハエがたかり、不衛生だ。川をトイレ代わりにすれば、水が汚れる。このため子どもたちは下痢やコレラといった感染症に悩まされ、乳幼児の死亡率が高い。このため村では、子どもたちの健康のために清潔なトイレづくりに乗り出したというわけだ。