20世紀には「オーストリアの魂」に
ただ、こればかりは真実です。もともと戦争が苦手だった、ハプスブルグ帝国、後のオーストリアで、プロイセンに負けたことがきっかけで誕生したこの曲ですが、1939年、ウィーンフィルの、後に「ニューイヤーコンサート」となる(当時は大晦日に開かれていたそうです)「特別演奏会」で演奏され、人々に勇気を与えたのです。
実は、その前年に、オーストリアは、ナチス・ドイツに併合されて国が無くなっていました。ナチスがメンデルスゾーンなど、ユダヤ系作者の芸術作品を禁止したのは有名です。しかし、ルーツがユダヤ人であるシュトラウス一族の曲の演奏を、オーストリアで禁止することはできませんでした。20世紀には、この曲は、すでに「オーストリアの魂」となっていたからです。
その後、戦争真っ最中の1941年に元日に開催日が変更されたニューイヤーコンサートで、現在に至るまで、「美しく青きドナウ」は変わることなく、演奏され続けています。
本田聖嗣