年末を代表するクラシック曲がベートーヴェンの「第九」だとすると、新年を象徴する音楽は、名門ウィーンフィルのニューイヤーコンサートで演奏されるシュトラウスファミリーのワルツやポルカ、ということになるでしょうか。今日取り上げるのは、いつも、コンサートの最後に演奏され、観客も手拍子で参加する人気曲、「ラデツキー行進曲」です。
「ラデツキー行進曲」は父1世の作品
今や世界の多くの国でテレビ中継されるようになった、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートは、年頭を飾るクラシックの名門演奏会です。そのチケットの入手は大変困難、とされていますが、テレビ中継では、ウィーンフィルの音楽に合わせて異なる会場で踊られているバレエを同時に放送したりするので、テレビのプログラムとしてもたいへん楽しめます。
このコンサートは、何といっても「ウィーン」ということにこだわっているので、19世紀に大流行した、シュトラウス一族のワルツやポルカが中心的な曲目です。そして、もっとも多く演奏されるのが「ワルツ王」と呼ばれるヨハン・シュトラウス2世の作品たちです。ウィーンにはハプスブルクの王の他にもう一人王がいる、シュトラウス2世だ、と言われたぐらい、当時の彼の活躍は目覚ましく、自作のワルツやポルカを演奏したり指揮したりする、いわば、スーパーアイドル、でした。本人があまりに忙しすぎたので、音楽とは別の仕事についていた弟たちを、無理やり、音楽の仕事に引き込んだぐらいでした。
しかし、そんな、シュトラウス2世の作品が多く演奏される、ニューイヤーコンサートの定番曲の中で、ラデツキー行進曲だけは、彼の父・シュトラウス1世の作品です。この親子には確執がありました。