コネクティビティがもたらすもの
著者は、コネクティビティがもたらすものとして、「オンライン群衆の集合知」と「証拠となるデータの永続性」を掲げている。現実世界の国境を越えた「オンライン群衆の集合知」により、市民はこれまで以上に飛躍的に「スマート」になり、ウィキリークス事案が示したように、いかに秘匿されたデータであっても流出する可能性は排除されず、また、それが永続することで、国家は説明責任を果たすことが求め続けられるとしている。我々日本人には理解しにくいが、同じ言語を話す、あるいは同じ民族でということで、現実世界を超えた新たなコミュニティが形成され、国家としてのガバナンスのあり方が問われるというものである。
「国家は、現実世界の内外政策だけを考えていればよかった時代を、懐かしむようになるだろう。仮想世界で現実世界と同じ政策をとればよいのなら、国家運営がそう複雑になることはない。だが国内を統治し、海外に影響力を及ぼすことが、以前に比べてずっと難しくなっているという事実に国家は向き合わなくてはならない。」
おそらくいかに強力な国家であろうとも、一旦獲得されたコネクティビティを自国の市民から奪うことは困難である。むしろ、逆にコネクティビティを利用することで市民を統制するという新たな統治手法を採ろうとする国すら出てくる可能性もある。しかし、著者は、このような動きを否定的には捉えていない。むしろ、過渡期を過ぎて新たなルールとエンフォースメントが確立すれば、政府と国民の信頼関係は強まり、社会の効率性と透明性が高まると楽観的に捉えている点は興味深い。