芸術の裾野広がり、スケールメリットに注目
そして、このパリ国立高等音楽院の卒業生で編成された、「パリ音楽院管弦楽団」は、世界最古の現代的編成のオーケストラだといわれています。そして、彼らが「第九」を演奏したときに、地元フランス出身のベルリオーズと、当時ドイツからやってきて不遇をかこっていたワグナーが聴いていた、とも伝わっています。深く影響された二人は、一方はより物語性の強い「幻想交響曲」を書き、もう一人は、オペラや交響曲を進化させた「楽劇」を作り出すことになります。ちなみに、その時の「第九」の演奏も、どうやら完全なものではなかったらしいのですが。
ともあれ、大オーケストラに4人のソリスト歌手、それに大合唱団が演奏に必要なこの曲は、市民によるプロ演奏団体、が育ってくるまでは、まともに演奏されなかったのです。
しかし、そうやって、演奏者が整ってくると、「参加人数が多い」ということが、また一つのメリットを生みます。関係者が多いため、お客がたくさん呼べるのです。
現在のパリ市においても、パリの幼年学校・社会人学校のコンセルヴァトワールこと、「区立音楽学院」などでは、学院としての定期発表会のプログラムに、必ず、子供の合唱が入ります。在校生の他に、少なくとも、そのご父兄は呼べるので、演奏の腕前はプロ級...とはまだいかないのですが、会場はビデオをまわす大人達で大入り満員となるのです。