なぜ「第九」が12月の日本を代表するクラシック音楽になったのか(後編)

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芸術の裾野広がり、スケールメリットに注目

   そして、このパリ国立高等音楽院の卒業生で編成された、「パリ音楽院管弦楽団」は、世界最古の現代的編成のオーケストラだといわれています。そして、彼らが「第九」を演奏したときに、地元フランス出身のベルリオーズと、当時ドイツからやってきて不遇をかこっていたワグナーが聴いていた、とも伝わっています。深く影響された二人は、一方はより物語性の強い「幻想交響曲」を書き、もう一人は、オペラや交響曲を進化させた「楽劇」を作り出すことになります。ちなみに、その時の「第九」の演奏も、どうやら完全なものではなかったらしいのですが。

   ともあれ、大オーケストラに4人のソリスト歌手、それに大合唱団が演奏に必要なこの曲は、市民によるプロ演奏団体、が育ってくるまでは、まともに演奏されなかったのです。

   しかし、そうやって、演奏者が整ってくると、「参加人数が多い」ということが、また一つのメリットを生みます。関係者が多いため、お客がたくさん呼べるのです。

   現在のパリ市においても、パリの幼年学校・社会人学校のコンセルヴァトワールこと、「区立音楽学院」などでは、学院としての定期発表会のプログラムに、必ず、子供の合唱が入ります。在校生の他に、少なくとも、そのご父兄は呼べるので、演奏の腕前はプロ級...とはまだいかないのですが、会場はビデオをまわす大人達で大入り満員となるのです。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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