国債が中韓の劣後に格下げされた日本の財政の「真相」

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   12月1日、格付け会社大手のムーディーズが、日本国債の格付けをAa3(最上位から4番目)からA1(最上位から5番目)へ一段階引き下げたと発表したことが、大きく報道された。格付けについては、「よくわかる格付けの実際知識」(山澤光太郎著 東洋経済新報社 2003年)が手頃な文献だが、このようなソブリン格付けは、「国の信用力、すなわち中央政府(又は中央銀行)が、当初の契約通りに債務を履行する意思と能力を評価し、債務履行の確実性を符号で表したもの」である。

   ムーディーズは、格下げの主な要因として、財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり、成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性、そして、それに伴う中長期的な日本国債の利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下、をあげている。

   上記著作では、ソブリン格付けは、通常の社債の格付けよりも「サイエンスの占める割合が小さく、アートの占める割合が大きい」とするが、いずれにしても、G7の英米独仏加(伊は除く)には遠く及ばず、最近の井戸端談義で経済がすぐにも崩壊するようにいわれる中国、韓国の格付けがAa3であり、それに劣後することになった現実をかみしめる。

   このような中、元財務官僚の小黒一正氏が、「政治の決断を問う!」として12月10日に出版したのが、「財政危機の深層」(NHK出版新書)である。本書の裏書には、「消費増税への根強い抵抗感、自転車操業で積み増す赤字国債、二〇歳未満と七〇歳以上で1億円超の受益者負担格差がある年金...。財政危機が叫ばれて久しいが、このままだとどうなってしまうのか、問題の本質はどこにあるのか。元財務官僚の経済学者が、世に氾濫する『誤解』を正し、持続的で公正な財政の未来を問う。」とある。「経済成長だけで財政再建はムリ」、「『異次元緩和』の巨大リスク」など、標準的な経済学者はみな一様に認めている事実である。いよいよ「財政破綻」が現実味を帯びてきたと警鐘を鳴らす。

  •                   財政危機の深層
                      財政危機の深層
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リフレ派も指摘する「社会保障支出削減」の必要性

   また、「社会保障費の伸びは1兆円ではない」とし、この10年の間平均すれば毎年2.6兆円程度のスピードで膨張してきているとの指摘は、元財務省官僚の率直な財政現状分析だ。財政再建派とよく対立しがちにいわれるリフレ派を代表する官庁エコノミストの1人である原田泰氏(早稲田大学政治経済学部教授)も、「長期的な財政再建のためには、何よりも、社会保障支出の削減が必要だ」と指摘する(「エコノミスト」2014年12月9日号掲載=毎日新聞刊=「アベノミクス効果はこれから 増税延期は正しい政治判断」)。小黒氏は、「シルバー民主主義」の台頭の中で、社会保障費の支出をコントロールすることは非常な困難が伴い、これへの処方箋は、政治的に中立的で学術的に信頼性の高い公的機関が「財政の長期推計」や「世代会計」などを試算し、国民に情報提供することだという。そして、増税か否かの問いは、「増税vs反増税」が対立軸ではなく、本当の対立軸は「増税vs社会保障費の抑制」であり、例えば増税の割合が大きいシナリオと、増税+歳出削減のシナリオをオプションとして比較し、国民的な議論を早急に行う必要があるという。

   債券マーケットで著名な高田創氏(みずほ総研)は、これまで2度「国債暴落」という本を書いている(2001年中公新書クラレ、2013年中央公論新社)。2013年の著作で、「国債暴落の蓋然性はより上昇した」としていた。我々に残された時間は少なくなっている。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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