巨大産業に挑む勇気ある告発 エキストラバージンめぐるオリーブオイル偽装の闇

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「我々はマリー・アントワネットじゃない」

   他方で、本書で紹介される大手オイルメーカーの主張にも一理はある。

   一定の品質で膨大な量のオイルを安価に供給することは、現代社会の必然の要請だ。世界中から買い付けたオイルを一定の味となるようブレンドする技術、衛生的安定的に製品管理する技術などに支えられ、安価なオイルが世界中の食卓を満たすことは一つの正義だろう。高コストで収穫に左右される不安定な「本物」のオイル供給だけには到底依存できない。現に今年のイタリアのオリーブは史上稀に見る不作との報がある。やはり大量供給の必需品であるオイルに原産地表示等の規制まで課すことは行き過ぎと言わざるを得まい。

   食品会社の役員が著者に語った言葉がこれを凝縮している。「我々は国民全員に食を提供することを考えるべきであって、金持ちさえ喜ばせればほかは忘れてもいい、というわけにはいかない。我々は『パンがないと農民が言うのなら、ケーキを食べさせたらいい』と言ったマリー・アントワネットじゃないのですから」(本書P209)。

   しかし、だからといって「エキストラバージンオリーブオイル」と名乗るに必要な基準に満たないものを、それと承知で瓶詰めし販売することまでは、如何な理屈でも正当化できまい。安価なオイルは単なるオリーブオイルとして売れば良いだけのことだ。映画の宣伝のような名称のインフレみたいなものだとするには、後掲するエキストラバージンの健康効果からしても無理がある。やはり詐欺まがいの行為は撲滅されるべきであり、著者の告発に共感する所以である。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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