イタリアのメディアは関連裁判一切報道せず
政治との癒着や買収された公務員、業界団体による甘い規格設定等々、イタリアそしてEUの健全性が疑われる惨状だ。強く印象に残るのは、イタリアの食品会社グループが、オイルの品質を暴いたスイスの雑誌主宰者アンドレアス・マルツ氏を名誉棄損で告発するとともに巨額損害賠償訴訟を提起した事件だ。裁判所は全面的にマルツの主張の正当性を認めたにも関わらず、イタリアのメディアは一切これを報じず、オイルの品質確保に向けた彼の5年越しの闘いは徒労に終わったという。巨大資本を監視するジャーナリズムさえ不在であることに愕然となる。
事業者がうそぶく「買主危険負担」、すなわち、オイルの買主が品質検査をする以上、事後に何が発覚しても買主がリスクを取るという業界慣行も疑問だ。エキストラバージン規格ではあり得ないような安価なオイルが「エキストラバージン」として売買され、リスクを取らされる買主は偽装オイルとは知らなかったと内心で抗弁しつつ、黙って売り抜けざるを得なくなる。ありえない安価さに、買主に「暗黙の了解」があるならロンダリングのようなものだ。そして全てのリスクは最終的に検査する術もない消費者に転嫁される。